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英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展

英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展
2008年4月25日〜7月13日
森美術館

Photo

文句なしに刺激的。

 デミアン・ハーストの作品に引かれ、英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展を観に行った。ハーストの作品とは、まっ二つにされた牛がホルマリン漬けにされている例の「衝撃的な作品」<母と子、分断されて>である。私にとっては長らく実物を観たかった作品の一つで、ようやくの対面となった。実際に対峙してみると、図版で観ていた印象とはまるで異なり、衝撃的であるとかグロテスクであるという表現は相応しくなかった。むしろ静謐な雰囲気に包まれているといっていい。そう感じたのは牛の断面が極めて丁寧に処理されていたことも大きいだろう。「生物を切る」という行為は料理のため日常的に行われている。ただ、文脈から切り離しそれだけをクローズアップして提示すると普段は隠されていたものが立ち表れてくる、そう頭でのみ理解している時は「グロテスクだろう」と勝手に決めてしまっていた。今回もまた実物を観ることの大切さを改めて教えられた。

 ターナー賞の受賞作だけを集めたこの展覧会が面白くないわけがない。ジリアン・ウェアリングのほとんど動きのない60分の映像作品を展示してしまうのはさすがに無理があるのではと思ったが、来館者は映像と作品解説を見比べながら作品の面白みを確実に掴んでいたようであるし、マーティン・クリードのライトが点いたり消えたりするだけの作品のある部屋では、通り抜けていった家族連れが狙い通りの会話を残していった。「これが作品なんだって」「うそでしょ」と。私のもう一つの目当て、マーク・ウォリンジャーの着ぐるみの熊の映像も楽しめた。そう、どの作品も期待を裏切らない刺激に溢れている。

出展作品の面白さもさることながら、本展は展覧会としての完成度が非常に高い。パネルのタイポグラフィー・デザインや作品(特に映像作品)の配置、モニターに映し出されたスライドショーなど隙がない。とくに章ごとに壁に据え付けられたモニターが映し出すスライドショーはデザイン的にも恰好がよく、その年の候補作品を順に観ることができる仕掛けである。ただ、来館者の多くは情報が時間差で表れてくるスライドショーよりも一度に把握しきれる文章のほうが読みやすいとみえる。しばし観察していると、スライドショーには一瞬目を向けるもののモニターよりも普通のパネルを見ている時間のほうが長いようであった。

この他、オーディオ・ガイドも無料で借りることができる。普段は借りない私も試しに使わせてもらったが、その内容の良さに驚いた。個々の作品解説というよりも、作品に即してターナー賞の歴史を辿るという構成で、その年の授賞式のエピソードなどトリビア的な内容が充実感を高める。機会があればもう一度見ようと思う。

英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展HP

英国美術の現在史ターナー賞の歩み

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