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オンライン展示考

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オンライン展示(online exhibition)考

美術館ウェブサイトの新たな可能性

 近年、「インターネット展覧会」という言葉を目にするようになった。ネットが浸透しつつある時期に盛んにもてはやされたアンドレ・マルローの「空想の美術館」を想起させるこの言葉自体に私自身抵抗がないわけではない。が、まずは次に挙げるオンライン展示をみてもらいたい。一つはニューヨーク近代美術館(MOMA)のDesign and Elastic Mind〔デザインとしなやかな思考〕というオンライン展示、もう一つは広島市現代美術館のインターネット展覧会である。

Design and Elastic Mind(オンライン展示)
広島市現代美術館インターネット展覧会(internet exhibition)

これらのサイト、特にMOMAのそれは美術館がこれまで行ってきたネット利用と明らかに一線を画している。非常に手の込んだフラッシュによりネットでしかできないことを実現してみせたと評価できる。インターフェース(画面)は世界的な評価を受けるウェブ・デザイナー中村勇吾の作品。

これまでも作家が自分の作品をネットで公開したり、実在する美術館が著作権が切れた作品の画像を公開したり、ということはあった。それらはしばしば「ギャラリー」という名称を与えられてきたが、どちらかといえばアーカイブであった。つまり、そこではある意図に沿って展示される展覧会ではなく、せいぜい常時公開の収蔵庫にすぎなかったのである。

それが今、実在の美術館が実際にネット上での展覧会に着手し始めている。もちろんMOMAのDesign and Elastic Mindはネット上だけで行われているわけではないがonline exhibitionと明記され、ウェブサイトも作り込まれている。普及媒体としてネットを積極的に利用しているだけではないか、という言葉も聞こえてきそうだが、決められた章立てのみならず、いくつかのテーマに沿って次々と作品をブラウジングしていけるところなどは、まさにオンライン展示の真骨頂である。ウェブ・デザインの成否が問われる部分であり、よく出来たインターフェースを準備することが今後更に求められていくことだろう。

そして、どうやら映像作品がオンライン展示という形態に適しているとみえる。実際の会場で映像作品を観るとなると、鑑賞に時間がかかるため作品数も制限される。まして混雑して立ち見などになったら最悪である。加えて、そもそもデータは複製可能を前提としている以上、乱暴にいえば存在するデータ全てがオリジナルな作品として成立しうる。データ化された映像作品は、どこでみてもオリジナルな映像作品として私たちの前に表れるといえよう。広島市現代美術館のオンライン展示はこうした映像作品で構成されており、なかなか面白い作品を観ることができる。

これまでは実際の美術館に足を運ぶ前に、今どんな展覧会が行われているか、や交通案内をチェックするのがウェブサイト利用の通例だったが、今や美術館のウェブサイトは、単なる情報掲示の場を超えて、それ以上の価値を持つに至ったとみるべきだろう。距離や時間に関係なく入場可能なもう一つの展示「会場」が、ネット上に確かに生まれつつある。今後もオンライン展示の動向には注目していきたい。


MOMAではDesign and Elastic Mindの他にもオンライン展示を観ることができる。
ニューヨーク近代美術館HP

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