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ウルビーノのヴィーナス

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ウルビーノのヴィーナス
古代からルネサンス、美の女神の系譜
2008年3月4日〜5月18日
国立西洋美術館

教科書的な展示内容

 イタリアから名画が来る。そう聞くと一点豪華な展覧会かと思ってしまうが、本展に限っていえばそうではない。美の女神ヴィーナスの古代における図像の在り方及びルネサンス以降の復活と発展の様子を辿るという教科書的な展示内容となっていた。つまり、≪ウルビーノのヴィーナス≫一点に焦点を合わせているのではなく、それも含めてヴィーナスの図像変遷を見せようとしている点が印象に残った。

会場では絵画のみならず、彫像やアクセサリー、調度品などに見られるヴィーナスの図像表現もみることができる。多様な展示品によって空間は、どこかヨーロッパの美術館のような雰囲気もあった。

 会場内に掲示されていたヴィーナスの図像変遷を示すパネルは、情報がよく整理されていて見やすかった。それによると官能性が際立つ≪ウルビーノのヴィーナス≫とは別に、ミケランジェロの下絵を参照した「男性的(哲学的ということらしい)」なヴィーナスの描き方があることがわかる。ポントルモの≪ヴィーナスとキューピッド≫だ。その作品も≪ウルビーノのヴィーナス≫の隣に展示されているのが本展の素晴らしいところ。きちんと構成された展示の中で観ればこそ、対比的に2つの作品を捉えられる。これらは収蔵先が違うのであるが、仮にイタリアで2つの作品が並べて展示されていたとしても、特に説明がなければ、影響関係などどこ吹く風、意識散漫通り過ぎてしまいそうだ。日本で、特別展で、観る意味もここに見出せる。

残念なのはジョルジョーネの描いたヴィーナスが展示されていなかったことである。ジョルジョーネの作品もパネルでは重要な位置付けにあったが、さすがに3点揃えるのは難しかったのだろう。構図を見る限り、企画した学芸員も出展させたかった作品に思えた。

展示室には図録に混じって、作品解説の拡大文字版も置かれている。こうした活動は地味なものだが、教育普及的な観点からみれば軽視できない。教育普及などと生真面目な表現をしなくとも、こうした「ちょっとした気遣い」が必要な人には嬉しいもの。コストも安く済みそうなので、他館でも導入が進むことを期待したい。

西洋美術館ではジュニア・パスポートという名称で小中学生向けの特別展用教育普及ツールを作成している。今回は、誕生・結婚・恋・キューピッド・もっとも美しい女神、のテーマ毎に簡単な解説が付く仕上がりとなっていた。このジュニア・パスポートを持った子供を見かけた人たちが「どこかに置いてないのかな」「便利そうだよね」と会話しているのが聞こえてきた。大人たちにも需要が多そうだが、今のところ配布はされていない。

それにしても上野の山は桜の季節。大変な混み具合を覚悟していたが、外の喧騒に比べれば、館内は落ち着いたものだった。

ウルビーノのヴィーナス 展覧会HP

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