« 閑話休題10 | トップページ | 「ユビキタス」を使ってみた »

ムンク展

ムンク展
2008年1月19日〜3月30日
兵庫県立美術館

Img429

装飾画家としてのムンク

 兵庫県立美術館で催されているムンク展を観た。ムンクの代表作である≪マドンナ≫や≪不安≫といったムンクの代表作を紹介するに留まらず、本展では「装飾画家」としての側面に焦点を当てている。ムンクの作品の中でおそらく最も有名と思われる≪叫び≫こそ出展されていないが、ムンクの名を聞いて思い当たる作品の多くが展示されていた。確かに充実している。

 有名作品のほとんどが入ってすぐの第1室と第2室に集中しており、徐々に装飾プロジェクトのための素描へと重点が移っていく構成だ。観客は後半にかけてムンクの新たな一面を発見でき、美術史的に「勉強になる展覧会」といえる。ただ正直なところ、有名作品が序盤で出尽くしてしまう印象が否めず、展覧会としての盛り上がりには欠けるような気もした。後半は素描中心である。

 ロビーではムンクの生涯についてのビデオが上映されていたが、これは普及効果が高そうだ。ムンクには興味がないと思って訪れた人でもビデオをみるうちに「観てみようか」という気分になるかもしれない。

 さて、装飾画家としてのムンクの仕事の中では、樹木が重要な役割を果たしているらしい。解説によれば、ムンクは個々の絵の画中に樹木を描くことで装飾としての統一感を与えていたということである。言われてみれば、確かに彼の作品の背景には木が多い。会場で私が惹かれた作品にも、木が面白い役割を果たしていたものがあった。額縁を含めて画面が構成されている作品≪メタボリズム≫である。画面にアダムとエヴァと木が描かれ、額縁の大きめの下部にはその木の根と人と動物の髑髏が刻まれている。そして額縁の上部には木の枝部分としてオスロ市の情景を刻むという具合である。木が額下部と画面、額上部を貫いている。≪マドンナ≫等においても額に描いたり、額を刻んだりという仕事はみられるが、額と画面を連続した空間として捉えていることが興味深い。

 こうした装飾画家としてのムンクの側面を伝えるべく、会場のデザインにも工夫がみられた。研究から浮かび上がってきた当時の絵の配列を素描で再現してみせたり、門を飾っていたと思われる作品の素描を実際に展示室と展示室の入り口にアーチ状に配置してみせていた。実物を展示するわけにはいかない壁画のプロジェクトは本物の存在感と雰囲気を伝えるべく映像で対応していた。国立西洋美術館との巡回展ということも手伝ったのか、派手さはないが構成と会場デザインがよく練られていた展覧会であった。

 会場を出たところに「絵メール」というサービスがあり、PCが4台設置されていた。ムンクの作品の画像を添付ファイルで希望のメールアドレスに送信できるという企画である。多くの画像がウェブ上で簡単に見つけられるこの時代に、どれほどの意味があるのかは不明であるが、試みとしては新しい。今は有名どころ数点の中から選べるだけであるが、出展作品を大幅に画像データとして公開し、展覧会で新たに見つけた「お気に入りの作品」の画像を手に入れることができるようになれば意味も見出せる。有名でない作品こそウェブ上でも手に入れるのが難しいのだから。こうしたサービスが充実すれば、観客と展覧会をつなぐ、新たな記憶の回路になるかもしれない。

|

« 閑話休題10 | トップページ | 「ユビキタス」を使ってみた »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/408077/10251398

この記事へのトラックバック一覧です: ムンク展:

« 閑話休題10 | トップページ | 「ユビキタス」を使ってみた »