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2008年2月

寺山修司展をデザインする

寺山修司展をデザインする
ジャグダ青森デザインキャラバン#3
2008年2月2日〜7日
青森県立美術館コミュニティギャラリー

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展覧会のポスターデザイン・コンペ

これから開催される展覧会のポスターを公開コンペで決める。これはなかなか面白い試みである。館内では職員が何枚かのデザイン原案を見ながら、これがいい、あれがいいと言い合うことはあっても、それを公開で決めようというのは珍しい。もちろん私も一票投じさせてもらった。

気に入ったものには何枚でも投票でき、写真も撮れたので、僭越ながら投票したものにそれぞれコメントを付けてみようと思う。

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普通の字体でつまらなさもあるが、そのぶん「寺山修司」の名前が力強く目に飛び込んでくる一枚。展覧会のポスターは何が行われるのか明確に伝わるほうがいいとの理由で選んだが、後で見返してみると思ったほど心に響いてこない。やはり字体はもう少し凝ったほうがいいのだろう。

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天井桟敷らしさ満点の一枚。ローマ字の間にちょこっと挟み込まれた寺山の顔がお茶目。ただ展覧会の名前が少し小さいのと、天井桟敷そのまんまのイメージになっているのが気になった。展覧会としての独自性をアピールできる要素が欲しい?

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会場に入ってまず目に飛び込んできた一枚。前述のものと同じ天井桟敷のモチーフを使ってはいるが、背景として上手く溶け込んでいる。展覧会名の可読性も高い。ポスター下部の寺山の群れ(だと思う)は、個人的にはちょっと苦手。

さて、注目の結果発表。選ばれたのは3枚目、チバレイコさんのもの。彼女はやはり青森県立美術館で行われた『舞台芸術の世界:ディアギレフのロシアバレエと舞台デザイン』(2007年9月29日〜10月28日)や国際芸術センターのアーティスト・イン・レジデンス展『裏糸:Under Thread』(2007年10月20日〜11月11日)のポスターを手がけているらしい。特に『舞台芸術の世界』のポスターは雰囲気がよく出ていて素敵なデザインだったと記憶している。

今回のプレイベント、約一週間で344名1206票の参加があったということなので、ひとまずは成功というところか。まずはプレイベントで盛り上げて、会期中の人の入りを後押ししたいという館の思惑が成功するかどうか、展覧会自体の入場者数にも注目したい。

会場風景
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「ユビキタス」を使ってみた

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青森県立美術館平成19年度常設展Ⅳ
2008年1月1日〜2008年4月13日
青森県立美術館

「ユビキタス」を使ってみた。

 ≪青森犬≫の写真が撮れるようになったということなので、どんな様子か青森県立美術館に出かけた。けれども、今回の話題は以前から気になっていたユビキタス端末。青森県立美術館は県立クラスでは初めてユビキタス端末を導入した美術館として知られている。実際のところその使い心地はどうなのか、使用感をレポートしたい。

 まず利用には申請書類が必要になる。「いつでも・どこでも」が合言葉と化したユビキタス端末を利用するために「記入」という古典的な所作を求められるとどこか居心地の悪さを感じてしまうのは私だけだろうか。できれば、もっと簡単気楽にアクセスしたいところだ。さて書類を書いてから機器の説明を受けるのだが、バッテリーは2時間しか持たないとのこと。もちろん会場を2時間かけてゆっくり回る人は多数派ではないとはいえ、今のPCやポータブル機器の持続時間を考えれば、かなり短い。特別展との併せて会場を巡るとなると少し心配であろう。筐体も大きめで、ハードとしてはまだまだ試作段階という感じである。

 コンテンツに関していえば、既に何度も訪れている私にとって館内情報は必要ないので、その点に魅力はあまり感じない。ただ初めて館内を訪れた者にとっては推奨ルートなどの情報は役に立つ面も多いはず。ただし「推奨ルートにしたがって展示室〜に進んでください」と言われるだけでは、その先の展示室に何があるのかは検索しなければわからないので、ガイドというには少し頼りない。肝心の作品や作家についての情報量も少なかった。求める情報の質と量は各人で異なるとはいえ、それぞれに対応できてこその「ユビキタス」であろう。現状の内容では機器を持つことで障害が増えただけのような気もする。端末の操作それ自体に煩雑さはないが、機器の装着感、端末を持って館内を歩くという行為に慣れるまでには時間が必要だ。少なくとも私の場合、手ぶらで館内を歩くよりも巡航に入るまでの時間は確実に増えている。

 利点を言えば、たいてい展示室の入り口付近に掲げられている解説パネルを見ずとも作品の前で作家情報が耳から入ってくることだった。作品を観ながら知らない作者についての情報を引き出せるのはやはり有り難い。ただセルガイドやオーディオガイドでもそれは可能なことなので、セルフガイドやオーディオガイドよりも操作が増えるだけのユビキタス端末に利点があるのかと問われると疑問符が付く。ユビキタス端末の利が出るか出ないかは、今後のインターフェースとコンテンツ開発の状況次第といったところか。例えば、作品の前に立てばその作品の解説が自動的に始まるならいい。しかし、今のところ端末をタッチペンで操り、画面中の作家タブ、作品タブを選択し、更にその後、個々の作品名までをも選択しなければ解説に辿り着けない。その動作の間、鑑賞者は端末に目を落としたままとなる・・・。

 また今回ユビキタス端末を利用してみて改めて意識したのが、館内をただ歩いているときにも私達はその美術館の雰囲気を感じ取っているということである。端末の利用によって逆説的に、館の雰囲気まで含めて私達の美術館体験は成り立っているという基本を再確認した。端末に目を落として、というか端末に意識を向けながら館内を回った結果、終わってみれば、普段のように美術館という展示空間を楽しんだという感覚は少なく、それぞれの作品の断片的な記憶だけが残った。私の場合、端末を使うことによって美術館という空間への意識が削がれていたのだった。

 ユビキタス端末を導入し、社会実験的に試用してみることの意義は深い。またそれに予算を割いた青森県立美術館が国内の美術館の中で今現在果たしている役割も見逃せない。ただ、もっとハード、ソフト両面における性能の充実をみなければ、「ユビキタス」という言葉の持つ意味を受け止めることはできないだろう。「使ってよかった」という状態になるまでには、今後のコンテンツの充実を待つ必要があるようだ。

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ムンク展

ムンク展
2008年1月19日〜3月30日
兵庫県立美術館

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装飾画家としてのムンク

 兵庫県立美術館で催されているムンク展を観た。ムンクの代表作である≪マドンナ≫や≪不安≫といったムンクの代表作を紹介するに留まらず、本展では「装飾画家」としての側面に焦点を当てている。ムンクの作品の中でおそらく最も有名と思われる≪叫び≫こそ出展されていないが、ムンクの名を聞いて思い当たる作品の多くが展示されていた。確かに充実している。

 有名作品のほとんどが入ってすぐの第1室と第2室に集中しており、徐々に装飾プロジェクトのための素描へと重点が移っていく構成だ。観客は後半にかけてムンクの新たな一面を発見でき、美術史的に「勉強になる展覧会」といえる。ただ正直なところ、有名作品が序盤で出尽くしてしまう印象が否めず、展覧会としての盛り上がりには欠けるような気もした。後半は素描中心である。

 ロビーではムンクの生涯についてのビデオが上映されていたが、これは普及効果が高そうだ。ムンクには興味がないと思って訪れた人でもビデオをみるうちに「観てみようか」という気分になるかもしれない。

 さて、装飾画家としてのムンクの仕事の中では、樹木が重要な役割を果たしているらしい。解説によれば、ムンクは個々の絵の画中に樹木を描くことで装飾としての統一感を与えていたということである。言われてみれば、確かに彼の作品の背景には木が多い。会場で私が惹かれた作品にも、木が面白い役割を果たしていたものがあった。額縁を含めて画面が構成されている作品≪メタボリズム≫である。画面にアダムとエヴァと木が描かれ、額縁の大きめの下部にはその木の根と人と動物の髑髏が刻まれている。そして額縁の上部には木の枝部分としてオスロ市の情景を刻むという具合である。木が額下部と画面、額上部を貫いている。≪マドンナ≫等においても額に描いたり、額を刻んだりという仕事はみられるが、額と画面を連続した空間として捉えていることが興味深い。

 こうした装飾画家としてのムンクの側面を伝えるべく、会場のデザインにも工夫がみられた。研究から浮かび上がってきた当時の絵の配列を素描で再現してみせたり、門を飾っていたと思われる作品の素描を実際に展示室と展示室の入り口にアーチ状に配置してみせていた。実物を展示するわけにはいかない壁画のプロジェクトは本物の存在感と雰囲気を伝えるべく映像で対応していた。国立西洋美術館との巡回展ということも手伝ったのか、派手さはないが構成と会場デザインがよく練られていた展覧会であった。

 会場を出たところに「絵メール」というサービスがあり、PCが4台設置されていた。ムンクの作品の画像を添付ファイルで希望のメールアドレスに送信できるという企画である。多くの画像がウェブ上で簡単に見つけられるこの時代に、どれほどの意味があるのかは不明であるが、試みとしては新しい。今は有名どころ数点の中から選べるだけであるが、出展作品を大幅に画像データとして公開し、展覧会で新たに見つけた「お気に入りの作品」の画像を手に入れることができるようになれば意味も見出せる。有名でない作品こそウェブ上でも手に入れるのが難しいのだから。こうしたサービスが充実すれば、観客と展覧会をつなぐ、新たな記憶の回路になるかもしれない。

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