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2007年12月

仙台芸術遊泳2007シリーズ4

仙台芸術遊泳2007シリーズ4
仙台照明探偵団
2007年12月18日〜26日
東北福祉大学ステーションキャンパス・鉄道交流ステーション

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照明から街を観る。

 この春完成した仙山線・東北福祉大学駅。その隣のステーションキャンパスにあるちょっとしたスペースで、仙台芸術遊泳2007の関連展示が行われている。
 ここで展示されているのは、12月15日に行われたワークショップ「仙台照明探偵団」のパネル展示。東京国立博物館のデザイン室長である木下史青氏が著作『博物館に行こう』の中で紹介しているように、元々は照明デザイナーである面出薫氏が社内で行っていた自主活動だったようだ。既に「照明探偵団」の名を冠した著作もいくつか刊行されているので、そちらを読まれた方もいるだろう。

 肝心のワークショップには別用で参加できず、パネル展示のみを見ることとなった。パネル展示からもワークショップの面白さが十分に感じられるだけに残念である。街路の至る所にいつも存在するのだが、普段は見過ごしがちな「明かり」。それらが放つ「英雄」的ないし「犯罪」的な光を検討しようというのが照明探偵団の主旨である。

パネルの中に「照明探偵団5カ条」を見つけたので、以下に紹介しよう。

1. 常に身の回りの光の害に憤慨すること。
2. 深く鋭く現場の光を観察すること。
3. 芸術的な光に大袈裟に感動すること。
4. 感動的な光の内容を冷静に推理すること。
5. 光の体験を継続的に蓄積すること。

 それにしても、住み慣れた街であるはずなのに、まったく知らない(正確に言えば意識されていない)光源が多いのには驚いた。これは自分が普段一つ一つの光源に注目しているのではなく、それらが複合的に空間を満たす光(すなわち照明)を感じているためだと思う。ワークショップの参加者もきっと同様だったのではないかと想像するが、参加者はこのワークショップを通じて光源に対して確実に敏感になれたものと思う。機会を見つけて、ぜひ参加してみたいワークショップである。

照明探偵団の詳しい活動については同団HPを参照のこと。
http://shomei-tanteidan.org/

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仙台芸術遊泳2007シリーズ3

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仙台芸術遊泳2007シリーズ3
光のダブルイメージ
2007年12月12日〜24日
仙台市博物館


博物館、なぜか有料。

 英語でmuseum pieceと言えば、博物館行きになったモノ、つまり貴重であるが古めかしいモノ、というネガティブな「古さ」をも含む言葉である。今回の展示もそういうイメージを喚起するに十分な内容だった。

仙台市博物館で行われているのは「光のダブルイメージ」。窓から差し込む心象的な光を捉えた作家、松尾藤代の作品を中心にした企画である。華々しい映像だけが光の捉え方ではない以上、絵画の中の光と向き合うという趣向も悪くない。「光」がテーマの今回の仙台芸術遊泳に相応しい静かな作品だった。

宮城県美術館、せんだいメディアテークで行われた先の2つの映像体験とは性格が異なる以上、松尾の作品とそれらを比べても仕方ないのでそれは避ける。問題は、なぜ有料なのかということである。そう、松尾の作品を全て鑑賞するためには常設展の入場料を払わなければならない。1階ロビーにおいて無料で見られる作品もあるとはいえ、他の多くの会場では全てが無料で見られる中でこの措置はいかがなものだろうか。ちなみに仙台芸術遊泳2007において有料であるのは、仙台市博物館と仙台市歴史民俗資料館のみである。2005年に行われた仙台芸術遊泳でも全ての企画が無料であったことを思えば博物館の姿勢は理解に苦しむ。

仙台市博物館では光をテーマに10点前後の館蔵資料を集めた展示も一部屋設けられているが、それも今見なければというほどでもない。どうして無料にできなかったのか。順路を工夫すれば常設展との棲み分けも可能と思われるだけに、単に展示場所の問題という訳でもなさそうだ。この措置が博物館独自の判断によるものか、それとも貸し会場的に仙台芸術遊泳の意向に沿ったものであるのかは確認する必要があるとはいえ、この企画に対し博物館側は乗り気ではないのか、そんな印象を受けたことは確かだし、仙台芸術遊泳2007という企画自体の足並みが揃っていない感じもした。

次回も仙台市博物館で開催することがあれば、次こそは「入場無料」を掲げてほしいものだ。

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閑話休題09

閑話休題09
≪青森犬≫の撮影が可能に

 以前このブログの中で、青森県立美術館所蔵のモニュメンタルな作品≪青森犬≫の撮影ができないことについて疑問を呈したことがある。ようやくの感もあるが、2008年1月から≪青森犬≫の撮影が可能になるらしい。これで他県からのお客様を案内しても、心おきなく≪青森犬≫をカメラに収めてもらえる。もはや無視できなくなっているバイラル・マーケティング効果を考えるならば撮影許可は当然の措置であろう。

ただし、これまで青森県立美術館は写真撮影ができない理由を一貫して著作権に依拠していたはずだ。では今回撮影可能になるのはどういう訳か。撮影禁止から撮影可能へ、館としてこの転換をどう説明するのか注目したい。(作品購入時の条件がどのようなものであるかは不明であるが、おそらく著作権の一部は既に作家から美術館へと譲渡されていたのではないか。だとすれば今回の転換は館内部の意見の変化であり、作家側との交渉により複製権の譲渡があったわけではないことになる。)この点に対しきちんと説明責任を果たさなければ、美術館は著作権を都合良く振りかざしていただけとも捉えられかねない。とりわけ来館者と一番に接する監視スタッフたちの発言は重要だ。

 本件は著作権に関する絶好の教育機会を青森県立美術館に与えていると私は考える。今後は「なぜ撮れないか」ではなく「なぜ撮れるのか」をアピールすることで「著作権」の考え方を県民に広める役目を果たして欲しい。それでこそクライアント・センタードの理念に沿うことができるし、地域のアート・センターとしての役割を担うこともできるだろう。今日、著作権は美術を考える上で少なからず関わってくる権利なのだから。

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Water展

Water展
2007年10月5日〜2008年1月14日
21_21デザインサイト

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素晴らしきデザインの力。

 ミッドタウンの端にある21_21デザインサイトで「水」をテーマにした一風変わった展覧会が行われている。「明治おいしい牛乳」などのデザインを手がける佐藤卓がディレクションを担当しているが、そのデザインの行き届く範囲が実に素晴らしい。解説文がなくとも展示とどう向き合えばよいかわかるのである。

もちろん展示空間も極めてデザイン・コンシャスな作りであるが、それだけで来館者が視覚的に展示と接することができる環境が生まれるわけではない。それは的確な「サイン」の成せる技である。普通、展覧会にいくとまず入り口で挨拶文を読み、部屋毎の展示パネルに目をやり、作品に付されているキャプションを読むことになるが、ここではそれは無用である。そのかわり、壁面に控えめに配された人影をみればよい。

つまり壁面の人影は「さくら」。会場を訪れた者に対して、終始無言で展示品をどう動かしたらよいか実演してくれているのだ。水瓶を覗き込めばよいときは水瓶を覗き込む人影が、電話をとるように機器を耳に当てればよいときは機器を耳に当てている人影が、すでにそこにいる。

もちろん展示内容も悪くない。「水」という存在に対して十分に啓発的であるが、それを感じさせない面白さがある。超撥水加工の皿の上にスポイトで数滴水を垂らす、そしてそれを揺すってみる。ただそれだけのことが面白いのは、水の動きが普段見ている水の動きではないからだ。極めて良質で美しいハンズ・オン展示の数々である。

また些細なことだが、皿からこぼれてしまった水を掃除するモップも美しく配置されている。そういうところ一つ一つに気が配ってあるような展覧会にはなかなかお目にかかれない。素晴らしきデザインの力。

ケータイを積極的に使おうという視点が入っていることも本展の特筆すべき点である。これまで展覧会でのケータイ活用は混雑状況を知らせる程度の印象しかなかったが、本展ではまち全体を生きた博物館として歩いてみようという「ユビキタス・ミュージアム」なるプロジェクトとのコラボレーションにより専用サイトが準備され、会場の展示と連動した企画がウェブ上でも動いている。企画を見る限りプロジェクト自体はまだ発展途上の印象だが、今後こうしたケータイの使い方が増えていくことを予感させる。

視覚による誘導とケータイとの連動。これらのデザイン・センスが教育普及事業において重要となる、そう確信させられた展覧会であった。

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六本木クロッシング

六本木クロッシング:未来への脈動
2007年10月13日〜2008年1月14日
森美術館

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オーディエンス賞で「交差」に参加する。

 面白い作品の点数も揃っていたし、若い作家の力量も垣間見えた。ただ、展示としてのまとまりには欠けている。いっこうに交差の「点」が見えない36組の作品から、来館者は「未来への脈動」をどう感じ取ればよいのだろう。脈動という周期的なイメージよりも不整脈のごとき混沌が、一つ一つの作品の良さを奪っていると感じたのは私だけなのだろうか。

 本展「六本木クロッシング」は『美術手帖』12月号で特集されている。それによると本展は4人のキュレーターにより企画されたらしい。なまじ事前に目を通したのがよくなかったのか、自然と「船頭多くして船山に上る」という言葉が思い出される。本展に関してはなにかと比較されることの多い、東京現代美術館のspace for your future展のほうが展示内容に一本筋が通っていたことは確かだ。作品の選定の基準があまりにも見えてこない。

そんな状況にあっても、きっちりと存在感を示した二人の作家がいた。一人は小品であるが実に緻密な版画を制作する富谷悦子、もう一人は日常に潜む笑いの種を拾い上げる能力に長けた田中偉一郎。この二人が私にとっての「今見たい(見るべき)作家」となった。そう、ここに展示されているのは「今見たい日本のアーティスト」たちの作品である。榎忠や吉野辰海、四谷シモンといったすでになじみのある作家たちの作品を「今見たい」と感じなかったのは、私にとって「今」という言葉に未知なるものに対する期待が含まれているからに違いない。これはあくまでも私の感想。決して榎忠や吉野辰海の作品の質が劣っていたわけではない。

私のように「この作品がなぜ展示されたのか」に引っかかることなくそれぞれの展示品と向き合えれば、混沌の中から好みの作品を数点拾い上げることができるはず。会場はそれだけの多様性を有している。

普段から教育普及事業にも力を入れている森美術館。本展では来館者が気軽に参加できる「オーディエンス賞」が設けられている。会場出口のタッチ・パネル式の端末を操作すれば、「最も印象に残った」作品に一票投じることができる。投票することで展覧会と実際に関わることができるし、来館者が展示を観る上での一つの動機付けになる企画である。ただし、鑑賞の際に少なからず「好き嫌い」で作品を取捨選択することに重点が置かれてしまうのではないかと気になった。「印象に残る」と「好き嫌い」は必ずしも一致しないとはいえ、多くの人は自分が気に入った作品に一票を投じるだろうから。

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仙台芸術遊泳2007シリーズ2

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仙台芸術遊泳2007シリーズ2
光の航跡 Off Nibroll
2007年12月1日〜24日
せんだいメディアテーク

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迫力の大画面による映像体験。

仙台芸術遊泳2007レポート、第2弾。「光の航跡 Off Nibroll」が12月1日からせんだいメディアテークで始まった。

会場を訪れてまず驚いたのが、迫力の大画面。とくに私が訪れたときは貸し切り状態だったこともあり、気持ちの良い空間の拡がりを体験できた。4面の大スクリーンに投影されたOff Nibrollの≪public =un+public≫が圧倒的な存在感を示している。人が鳥へと解体されていく様が印象的な映像作品だ。Off Nibrollは、ダンスと映像を融合させたユニットである。本作は元々2005年に横浜で行われた身体表現と映像によるインスタレーションで、今回はその映像部分だけが流されている。

さらに会場は奥へと続く。こちらにもスクリーン3面を使った映像作品が設置されている。なんとも贅沢な空間構成。ここではちょっとだけ参加型の映像を楽しめる。ハイテクの影絵遊びとでもいおうか、スクリーンに映し出された自分の「中」を映像が駆け抜けていくのだ。あたかも「自分」というものが空洞化してしまったかのような、不思議な感覚が面白い。この他、実写を加工したものが2作品、CG作品が1作品、計5作品ほどを観ることができる。

展示空間を抜きにして映像それ自体の好みをいえば、実写よりもCG作品≪No Direction≫に惹かれた。生成あるいは増殖する草花とシルエットの人が組み合わされた神秘的な作品である。映像中の人影は、植物に何らかの作用を与えているように見えるが、それは単なる幻影にすぎない気もする。それともあれは、植物の中に宿る「人」の記憶だったのだろうか。

 この展覧会は、12月10日までは10:00〜19:00、11日からは12:00〜21:00、と開場時間が変わる。仙台の冬の一大イベント「光のページェント」に合わせての変化である。地域のイベントとリンクした時間設定は「ミュージアムタウン構想の推進」事業としての面目躍如というところか。

なお、せんだいメディアテークはガラス張り。映像の光を味わうためには夕闇が降りてからの来館をお勧めする。

会場風景

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大画面がお出迎え。≪public =un+public≫2005.

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ちょっとだけ参加型。筆者の影を映像が駆け抜ける。

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実写を使った作品。

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神秘的な情景、筆者好みの作品。≪No Direction≫2005.


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会場風景。


Off Nibroll [public=un+public]DVDOff Nibroll [public=un+public]


販売元:日本技芸

発売日:2005/08/04
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鳥獣戯画がやってきた!

鳥獣戯画がやってきた!
—国宝『鳥獣人物戯画絵巻』の全貌
2007年11月3日〜12月16日
サントリー美術館

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人垣をかき分けて、鳥獣戯画。

 リニューアルオープン後のサントリー美術館を見たいと思い、先日ぶらりと出かけてみた。祝祭が日常のミッドタウンの喧騒の中、自然光のスポットライトを浴びる安田侃≪意心帰≫に触れた後、目的のサントリー美術館へ。

展示空間の印象は、一言でいえば「古さのあるモダン」。開放感がなくどこか古めかしさを感じさせる。もちろん作品保護のために照明を落としていたせいもあるだろうが、1000㎡の床面積のわりにはこぢんまりとしたその様子に少々拍子抜けした。しかし現代美術の森美、なんでもありの巨大展示空間をもつ新美という六本木地区の勢力図を見れば、小さくともハイ・アートが似合う、落ち着いたこの空間こそが棲み分けの点からみても相応しいのだろう。少し大人の美術館、そんなイメージを湛えている。あくまでもそれは展示空間のみの印象であるが・・・。

できれば休日に都会の展覧会は避けたいところ。人垣の向こうに垣間見られる、わずかな戯画。ほとんど鑑賞する気力も失われそうな状態だが、そこは鳥獣戯画。絶妙に動きを表現する筆致の魅力は高い。ユーモア溢れるウサギや蛙の姿に、現在の日本の漫画文化の源流が見える。

この展覧会ではショップの配置が特徴的であった。会場中程に特設の売り場が設けられているだけで、会場を出た後に特別展関連のグッツを買うことができないのである。入り口部分の常設ショップの混雑を緩和するためと推察するが、展覧会を全て見終わってから購入を考えるとなると、会場内をまた戻らざるを得ない(ちなみに再入場はできない)。どちらが購買上の効率がいいのかはわかりかねるが、一来館者の意見としては、会場を出た後でもグッツが買えるとありがたい。


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