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街かど美術館

街かど美術館 アート@つちざわ<土澤>advance
岩手県花巻市東和町土澤商店街
2007年10月27日〜11月25日

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「つちざわ」の地力、解放中。

 岩手県花巻市東和町土澤。萬鉄五郎の故郷であるこの地で「街かど美術館」なるアートプロジェクトが行われている。街全体を美術館と見立てるアートプロジェクト自体に目新しさはないが、実際に見学しなければわからないこともある。どのくらいの人が訪れているのか、地元の反応はどうか、そもそも作品は面白いのか。まあ大した事はないだろう、そう高を括っていた。だが、現地に着いた瞬間それが見当違いであることに気がついた。人が多い。活気がある。期待が一気に膨らんだ。

 「街かど美術館 アート@つちざわ<土澤>」は2005年に始まり、今年で3年目を迎える。正確にいえば、2年目の続きと捉えるべきか。というのも、今回の出展作家は昨年の参加作家の中から選ばれた精鋭4人であり、今後は、誰もが自由に参加できる「街かど美術館」が1年目、今回同様の選抜形式で行われる「街かど美術館advance」が2年目、と2年サイクルの運営方針が打ち出されているからである。ビエンナーレやトリエンナーレと異なるこの2年サイクルは、地域住民や美術制作愛好家が「作家」として参加できる余地を残しつつ、アートプロジェクトとしての質も明確にしようという試みであろう。なるほど工夫したものだ。

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まずは萬鉄五郎記念美術館から見学。萬の画業の中でめぼしい作品は東京国立近代美術館や岩手県立美術館などに収蔵されていることもあり、やはり観るべき作品は少なかった。ただ解説パネルに萬の生涯のトピックを描いたイラストが載せられており、これはなかなか面白かった。なお同美術館内に今回の「街かど美術館」の出展作家、渡辺豊重の作品が多数設置されていたが印象は薄い。私としては他の3人の仕事に惹かれた。

 沢村澄子の作品は書。カフェや洒落た居酒屋の壁が良く似合いそうな作品で、室内装飾としても魅力的だ。異彩を放っていたのが鎌田紀子である。彼女の作品は「キモカワイイ」と表現される人形たち。人形本体の魅力もさることながら、彼女はそれが置かれる「場」の雰囲気を捕まえるのが上手い。銭湯での展示が良い例だろう。不特定多数の人間が裸で行き交った銭湯は、いわば日常にある非日常。かつての利用者たちが銭湯に残した情念すら人形に宿るかのようなインスタレーションが出来上がっている。

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沢村澄子の作品。
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鎌田紀子の作品。

 そして松本秋則。その名前はすっかり忘れてしまっていたが、彼のサウンド・オブジェを前にして、以前読んだ本に似たような作品が紹介されていたことを思い出した。2004年に神奈川県立近代美術館で行われた「きょうの はやまに みみをすます」という教育普及プログラムについて書かれた本だったが、帰って調べてみるとやはり彼の作品を使ったものだった。実際に彼の作品を前にすると、このサウンド・オブジェを使おうと決めた教育普及担当者の選択も納得がいく。実に心地のよい音色がする作品で、動きの面白さもある。その集大成が「森永ミルクセンター奥の倉庫」をまるまる使ったインスタレーション。幻想的な空間の演出が訪れる者を魅了する。松本は各所で素晴らしい表現をみせてくれた。

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ミルクセンター奥の倉庫。

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倉庫内、松本のインスタレーション1。

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倉庫内、松本のインスタレーション2。

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他の場所にある松本の作品。

 総じて、「街かど美術館」advanceは、遠方から訪れた者の期待をもしっかりと受け止めるだけの質の高い作品で彩られていた。イベントとしては間違いなく成功であろう。ただアートプロジェクトとしての成否が問われるのはまだ先のこと。現実には過疎が進んでいるようだ。常に行われているわけではないアートプロジェクトは、美術館と異なり集客効果の持続性に弱さがある。とはいえ、「つちざわ」には様々な方向性をもったエネルギーが集まっていた。「つちざわ」に変化を起こそうと尽力する者、作家として「つちざわ」と向き合う者、変化のうねりに引き寄せられる観客、その変化を記述し研究しようとする者などなど。これらのエネルギーは着実に今後の「つちざわ」の変化の糧となるだろう。それぞれの思惑が交差する「つちざわ」から、今後も目が離せない。


会場風景

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掲示版で意見交換。

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昨年の作品も残る。安齋重男の写真。

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「平成19年度芸術拠点形成事業(ミュージアムタウン構想の推進)」(文化庁)に採択されている。

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松本の作品は動きも楽しめる。

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やはり気持ち悪い鎌田の作品。

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紙以外にも表現を刻んだ沢村。

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