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上村松園 伝統と近代

上村松園 伝統と近代
2007年10月6日〜11月11日
福島県立美術館

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優美な描写に惹きつけられる

 福島県立美術館で上村松園展を観た。あまり興味はなかったのだが、宮城県美術館で先日まで行われていた日展100年展の余韻も残っていたので出かけることにした。仙台からバスで一時間ちょっと、時間的には遠くない。

 平日にもかかわらず、なかなかの人の入り。お年を召した方が多く訪れていた。上村松園の人気が垣間見られる。確かに絵は美しい。「幽玄」と一言で言い表すのは簡単であるが、それを支える技巧と観察眼を思うと絵に力強さすら感じとれる。展示においても松園の力量を示すため、キャプションに他の画家の描いた同主題の絵を載せていた。その比較が際だっていたのが<蜃気楼>である。比較対象としてあげられたのは蠣崎波響の<夢蛤美人図>。波響の絵では蛤の絵と美人の絵が無理矢理組み合わされたようで観ている方も居心地が悪いが、松園の絵は双方が上手く組み合わされ一つの場面として調和している。写真ではなく実物を用いて波響と松園の比較ができれば嬉しかった。

松園には構図の妙があるが、彼女の描写の魅力はそれだけではない。かんざしや扇子といった小道具も含め、細部に至るまで丹念に描かれている。また薄衣やすだれ等、透ける部分の表現は特に際だっており、それは大作<楊貴妃>に十全に表れている。

ふと隣り合う絵の着物の色や柄が似ていることに気がついた。展示を考える際に配慮したのであろうか、その点も含め作品の順序や配置に非常に気を配られていた展覧会であったように思う。また、この展覧会では下絵が見られたのが面白かった。代表作である<花がたみ>の下絵も展示されていた。修正箇所に新たに和紙を貼り重ね、筆致を修正していく様が見て取れたし、本作と見比べると着物や帯に意匠の変化も見出せた。

 展示以外の部分も満足行くものだった。福島県立美術館では特別展会場内も含め要所要所に休憩所が設けられており、展示室から竹や紅葉に彩られた外庭を眺めることができる。秋の深まる気配を感じながら、優美な描写の松園の絵と向き合う。それは格別の時間であった。

なお常設展では、伊砂利彦という作家の展示が目を引いた。型染めの作家のようだ。ドビュッシーのプレリュードに着想を得た、モノトーンの抽象表現が美しかった。こちらは12月27日まで観られるようである。

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