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大原美術館

大原美術館
岡山県倉敷市

「常設」の贅

 常設展示を楽しめる美術館、それが大原美術館である。日本初の西洋絵画を扱う私立美術館であり、早くから教育普及事業に力を入れてきたことでも知られている。エル・グレコやモネ、ルノワールなどを中心に、民芸運動に関わった作家の作品からポップ・アートまで、収蔵品は幅広い。他館では特別展で目にするような作品が、常設で展示されている。

 ギリシャ神殿風の本館正面は思いのほか小さい。二体のロダンに迎えられ、名画の旅を開始する。大原美術館のコレクションとしては印象派が充実しているのだが、印象派よりはエル・グレコ、ギュスターブ・モロー、モディリアーニなどが好みである。大原美術館の収蔵品の幅広さは多様な好みに応えてくれる。

ふと、学芸員が選んだ「この一点」という作品紹介が目に留まる。児島虎次郎の<ベゴニアの畠>だ。みな熱心に解説文を読んでいる。しばし観察してみると多くの来館者は明らかに絵を見るより、文を読むほうが長い。後ほどHPで確認したところ、「この一点」は企画展(展示期間9月11日〜12月24日)の扱いを受けている。なるほどキャプションではなくパネルとして捉えれば、文の長さも納得がいく。それでも、一枚の作品解説としては少々長すぎる気もした。

 大原美術館には、有名な逸話を持つモネの<睡蓮>がある。・・・<睡蓮>をみた一人の子供が「かえるがいる」と指摘する。もちろん画中に蛙は見あたらない。「どこに?」と問われた子供は「葉っぱの下」と答えたという。・・・この逸話が本当かどうかはともかく、鑑賞教育の目指すべき一つの地平を示す例である。この「かえる」は子供にとって想像遊びによる産物ではない。明確に画中に「発見」された存在に他ならなかったはずだ。子供が絵から受け取る内容や子供にとってのリアリティを大事にする必要性を教える逸話と私は理解している。(大原美術館の教育普及事業については、『かえるがいる−大原美術館 教育普及活動この10年の歩み 1993〜2003』(財団法人大原美術館,2003年)に詳しい。興味のある方はそちらを参照していただきたい。)

他館の特別展のパンフレットなどが置いてある休憩室のようなところに、『大原美術館ティーチャーズガイド』という冊子があった。「手続編」と「活用編」に分かれており、学校の来館実績もひと目でわかるようになっている。デザイン的にはまだまだ改善の余地を感じさせるが、学校との連携を円滑に進める上で不可欠な媒体であろう。


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