« フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展 | トップページ | 猪熊弦一郎展 »

エルネスト・ネト展

エルネスト・ネト展
2007年7月15日〜10月8日
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

Img406_2

柔らかな作品に抱かれる感覚。

 鑑賞者が展示空間に身を任せる。作品と鑑賞者の双方向的な関係、エルネスト・ネトの作品はそれを生み出せる。鑑賞者は関わり方次第で、いわゆる「普通」の鑑賞体験とは一味違う時間の過ごし方ができる。「作品に抱かれる感覚」とでも言おうか、身体全体を通して作品を体験できるのである。

入場に際しては靴を脱ぎ、靴下の裏のホコリを取るように言われる。たしかに、これを怠れば、展示期間を通じてネトが作り出した白の世界をきれいに保つことができない。とくに白は汚れが目立つし、汚れていては清潔感を欠く。全ての人が展示空間を心地よく楽しむためには必要な配慮といえる。

布で覆われた作品内部は穏やかに白く光る。クッション性のある床や壁も同様に白く、ところどころにほのかに淡い色が添えられている。物理的にも視覚的にも非常に柔らかい空間が構築されている。その空間は、入った者を温かく包み込み、ぬくもりを感じさせる十分な表情を与えられている。腰を下ろし、ゆっくりと天井を眺める者、大の字に寝そべる者、この空間の過ごし方、楽しみ方は様々である。共通しているのは、普段より時間が少しだけゆっくりと流れていることかもしれない。ここでは不思議と人の動作も穏やかになるようだ。

大人にとってゆっくりとした時間が流れる空間も、小さな人にとっては最高の遊び場となる。私が訪れた当初、小さな団体によって空間は賑やかに演出されていた。彼らは難しいことは考えず、十分に空間を満喫していた。そして、それは非常に正しい。彼らが存分に楽しめる懐の広さもこの空間の魅力なのだ。だが、皆がそれを快く思っていないこともまた事実である。ロビーにネト展の感想集が置かれていたが、その中にはいつから美術館は子供の遊び場になったのか、というような批判的なコメントもあった。本展の作品の性格を鑑みると、この種の批判が出ること自体、作品への理解を欠いているように思うが、当人にとっては不快な鑑賞体験になってしまったのだろう。それはそれで残念である。パネル等で作品についての館なりの解釈を予め添え置くことでそれが回避されるなら、美術館と来館者どちらにとっても幸福な結末になっただろう。

私にとって展示空間は終始心地の良いものであったが、想像していたよりも小さかったのが残念だ。奥行きがないという印象がある。裏を返せば、もっともっと続いていて欲しい、それだけの感覚を与えてくれる空間と言えるのだが。

作品の外側では、制作の様子を映した映像をみることができた。写真が一秒ごとに変わるスライドショーの形式で、素材はカタログに掲載されていたものが含まれていたように思う。ほぼ一週間に渡って徐々に空間が構築されていく様子とともに、作家やスタッフの表情にもせまる作りであった。ただ何分の映像なのか題箋があれば、より親切なのは間違いない。

|

« フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展 | トップページ | 猪熊弦一郎展 »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/408077/8464856

この記事へのトラックバック一覧です: エルネスト・ネト展:

« フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展 | トップページ | 猪熊弦一郎展 »