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閑話休題05

映画『OUR MUSEUM』
Ufer!Art Documentary,2002年.
Img026

存在自体に価値がある

まずこの種のドキュメンタリーが存在したということに感謝したい。2002年の作品だが、それ以前も以降もミュージアムを扱ったドキュメンタリーが日本にあっただろうか。本作は「美術館とはどんな場所か」をテーマにした、存在自体が貴重なドキュメンタリーといえる。主に京都市立美術館とパリ市立近代美術館、ポンピドゥー・センターの歴史を比較しつつ、学芸員や美術家へのインタビューから美術館の役割を考察するという内容になっている。

 ただ残念なことに、パッケージに書かれているテーマが今ひとつ画面からは見えてこない。見るだけでは理解しにくいのだ。わかりにくさを助長する一つの理由として、パリと日本を交互に話題にするという手法が挙げられるだろう。またインタビューの質問項目が伏せられていることも仇となったかもしれない。パリと日本の学芸員、あるいは美術家や建築家がそれぞれの立場から美術館を語ることで多様な視点が垣間見られた反面、それが見る者の印象を散漫にしてしまった感は否めない。

しかし、それぞれのコメントは示唆に富む。

「生きている美術館とは答えをもたらすと共に問題をなげかける美術館のことです。美術館とは特権的な場所で、問題を問いかけなければならない場所。入ったときと同じように出てこれない場所なのです。」

これはパリ市立近代美術館の部長が語ったもの。美術館はそうであってほしいと自分も思う。そして、専門家以外のコメントも興味深い。オープニングではポンピドゥーセンターや京都市美の前でいろいろな人が「美術館とはどんな場所か」をワンフレーズで表現している。「知識」、「静けさ」、「発見」、「デートスポット」、「証言」、「新しい発想」等々。人々が美術館にどんな期待を寄せているかを感じられる。こうした「生の」感想が聞けるというのは嬉しい限りだ。

またいつの日か、こういうドキュメンタリーが撮られることを切に願う。仮に自分が美術館に身を置くならば、館の役割や仕事を舞台にしたドキュメンタリーを必ず残そう。そう決意させる一本であった。

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