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アンリ・カルティエ=ブレッソン展

アンリ・カルティエ=ブレッソン
知られざる全貌
2007年6月19日〜8月12日
東京国立近代美術館

R0013643

モノクロの世界の豊かな表情。

ブレッソンの写真はレンブラントの絵画を思わせる。そう、前後の物語を連想するに最も適した瞬間が切り取られているのだ。観る者が物語をイメージできる構図。「決定的瞬間」とは、きっとそういうことなのだろう。

本展はアンリ・カルティエ=ブレッソンの大回顧展である。ビンテージ・プリントを多数含む写真の他、彼の個人的なアルバムや晩年のスケッチまでを網羅する。約450点に及ぶ作品数は、まさに全貌と呼ぶに相応しい。

入ってすぐの位置に、「決定的瞬間」という言葉を広く世間に印象づけた写真<サン=ラザール駅裏>が展示されている。「クラシック」と題された傑作選だ。有名作品が目白押しのこの導入は一瞬にして来館者の心を掴む。後ほど登場するビンテージ・プリントとの比較を楽しむのもよい。

展示室は主として白壁に黒い額縁。ブレッソンのモノクロの世界に良く合うように、落ち着いた色が与えられている。なによりこの展覧会、空間構成が絶妙だ。独立運動期のインドと国共内戦時の中国、冷戦時のアメリカとソ連というように対比的な空間を演出している。それによって時代の証人となったブレッソンの仕事を効果的に紹介することが可能になっている。可動式の展示壁をもつ美術館ならではの見せ方だろう。

ガンディーの死、国民党軍の敗走など重大な歴史の転換点に居合わせたブレッソンだが、彼の写真の魅力はそれだけではない。そうした大掛かりな舞台装置を必要とするまでもなく、彼の目は日常に潜む絶妙の表情を切り出している。ブレッソンのそうした写真は、必ずどこかユーモラスだ。ベルリンの壁を眺める三人の男たちを後ろから写した<ベルリンの壁建設の後>はその好例。

写真だけでもかなりの分量なのだが、最後の最後に映像スペースが設けられていて、その時間も一時間近くあるのだ。内容が充実しているのは嬉しいが、これでは時間がいくらあっても足りない。また、フロアガイドや導入部のパネルではガンジー、それ以外ではガンディーという表記の揺れも若干気になった。ガンディーに統一すべきだろう。

じっくりと回ったのでさすがに疲れたが、「いつか自分にもこんな写真が撮れたら」、そう思えた。大変充実した展覧会だった。

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