« パルマ展 02 | トップページ | 美術検定 モノを観る力? »

生誕100年 靉光展

生誕100年 靉光展
靉光—激動の昭和/幻想と現実を見つめた画家
2007年6月9日〜7月29日
宮城県美術館
R0013478

「日本にもこんな画家がいたのか。」

靉光(あいみつ)の絵は独自の世界をみせてくれた。とはいっても初期の油彩はセザンヌやルオーの表現を実験的に用いている。有名なのは、<目玉のある風景>だ。「日本のシュルレアリスム絵画の代表作」と評されている。この作品を含め近辺にある<馬>や<ライオン>を観る限り、靉光は完全なる非現実を描いているわけでも、自分の精神世界に閉じこもっているわけでもないようだ。「地に足のついたシュルレアリスム画家」とでも言うべきか。現実に根ざしての思考、それに相応しい表現が彼にとってはたまたまシュルレアリスムだったのかもしれない。

本展は靉光の生誕100年を記念し、約120点の作品から彼の画業を振り返る内容となっている。展示されている作品は、油彩、ロウ画、墨絵、細密画と幅広い。様々な表現を模索してきた結果ともいえる。

R0013526

特に良かったのは、ロウ画と細密画。ロウ画とは靉光独自の技法だそうだ。溶かしたロウやクレヨンに岩彩を混ぜて描くことで、独特の質感が生まれている。絵として脆弱なのかロウ画の一角はとくに照明が落としてあったように思う。

細密画は筆と墨による表現のはずだが、まるでエッチングのような雰囲気を漂わせている。とにかく筆が細かい。なかでも<二重像>は描写力、発想ともに秀でており、本展でも特にチェックしておくべき作品の一つだ。(上記写真右下)

靉光がデッサンに長けていたことは展覧会後半の植物を描いた作品からも明らかだ。葉やツルの形状は正確さのみならず装飾性すら感じさせる。ポストカードにしても人気が出そう。残念なのは、全般に保存状態が悪く、しみや黄ばみが散見されたことだ。

ただ私は靉光の自画像は好きではない。なぜなら晩年に描かれた3点の自画像には目がないのだ。どこか異形の相である。なぜ彼は目を描かなかったのか。戦時中、我が身の置かれている状況故といってしまえば簡単だが、幾多の表現と格闘してきた男は、まだ世の中を堂々と見据えるだけの何かをつかめていない自分へ苛立ちを感じていたのかもしれない。そして、それを観る私がその自画像を好きになれないのも、自分がそうなることを恐れているからではないか。そんなことを考えながら、やや後味の悪い思いで会場を後にした。

|

« パルマ展 02 | トップページ | 美術検定 モノを観る力? »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/408077/6870705

この記事へのトラックバック一覧です: 生誕100年 靉光展:

« パルマ展 02 | トップページ | 美術検定 モノを観る力? »